(解説)
私の親父は、農業を営んでいました。非常に働き者で、近所の人からは「あんなに仕事が丁寧で、手抜きをしない人はいない」と評判で、信頼されていました。年がら年中長靴や直足袋を履いて仕事をしていたイメージが強かったので、ある時サンダルを履いていたというだけで、そのことが近所で話題になるような人でした。人よりも(秋の収穫が)ちょっとでも欲しいという気持ちがあれば、冬のうちから畑の堆肥を作ったり、そういうことを惜しんではいけないということを黙々と働いている後姿を見て感じさせられました。
親父からは、企業経営のことは何も教わらなかったけど、人一倍働いて、努力や工夫を惜しまずに頑張れば望む結果が得られるということを学びました。とにかくやる。何をやれば良い結果につながるかだけを考えて、人から見たら面倒で、つい怠けたいと思うようなことも、面倒と思わずにやり続けて、結果を出していました。私は、創業以来、我が社の方向付けをする上での指針、思想、考え方の基本となった、深耕ということも教わりました。それは、畝(畑に作物を植えつけるために間隔をおいて土を筋状に高く盛り上げた所)を作る時に、普通は一度ですむところを二度鍬で耕していました。そうしておくことで、作物の根が深く張り、養分を吸収しやすくなり、作物が健康に丈夫になります。根が深く下に張っていれば台風の時なんかの風でも完全にダメにはならないと言われました。
私は、親父から教わった深耕という考えは、「企業経営も農業も一緒だ」と思っています。創業時から20年間は下に伸ばせ、根っこを張れと皆さんに言い続けてきました。私は設立からの20年の間、初めは250万だった資本金を、将来の事業資金に備えて5人の創業メンバーで少しずつ増やして1億6,000万にしたことや、高粗利商品をあえて扱わず、会社としての基礎体力をつけることを優先させました。そのためには、得意先の絞込みと、会社の資源を分散させないで、集中させたほうがいいと考えました。一人の営業が色んな分野(例えば、産業給食、学校給食、ホテル・レストラン卸など)を担当すると要求されるものがそれぞれ違うので対応がしきれません。会社の資源を分散させないということがお客様の信頼を勝ち取れると思いました。
・お客様のところに根を下ろす
・地域に根を下ろす
・仕入先に根を下ろす
・関連企業に根を下ろす
・会社も根を下ろす
・社員みんなも根を下ろす
私たちは、これらを経営の基軸にして、これからも堅実でみんなに必要とされる会社を創っていきます。
みなさんも、この基軸をしっかりと胸に刻んでおいてください。